人々とのつながりを構築したいという、とても社会的な思いから始めた起業家もいます。別の起業家は病気を発見する機械を作ることに情熱を燃やすかもしれませんし、人々が買い物をする方法を変えることに情熱を燃やす人もいます。そこから生まれた企業のひとつが米アマゾン・ドット・コムです。より効率的にエネルギーを使う方法を考案するなど、全く別のことに情熱を燃やす人もいるはずです。
企業規模は成功を決定するうえで最も重要な要素ではありません。重要なのは、自らの立ち位置をしっかりと固めることです。
戦略の中核を成す原則は、「顧客のためにユニークな価値を創出する」「何をして何をしないかを明確にし、選択する」の2つです。
多くのビジネスリーダーは投資家や株主のためにしなければならないことばかりを考え、ときとして「会社が成功するために必要なことは何か」という大局を見失っています。
毎年、数人の教え子が「私はこれから何をすべきでしょうか」と聞きに来ます。私のアドバイスはいつも同じです。「報酬をもらえなくてもやりたいと思えることは何かを考えなさい」と。名声や高額の報酬を得たくて仕事を選ぶ人は、偉大な経営者にはなれません。
仕事に情熱を持つだけでは、事業を成功に導くことはできません。情熱があっても失敗する人は大勢います。情熱や体内から湧き起こるエネルギーと、明確な選択の組み合わせが大切です。
戦略の立案の仕方を知らなくても、優れた戦略は立てられます。多くの場合、それは自分の信念をもとに実行することから始まります。
他社とは異なる選択をすることで差別化を図ると同時に、万人を喜ばせるのとは別の方向へ進む。戦略の本質を簡潔に言い表せばこうなります。
今日のグローバル経済においても、競争上の優位性は、地域の遺産や特徴を利用することによって獲得できることが多い。
「人を喜ばせる」という思いは、資本主義の神髄です。
他人と同じ、もしくは他人のやっていることを少し良くしようという程度では、事業は成功しない。
成功する会社は皆、顧客のニーズをどう満たすかという点について新しい発想を持っています。
事業が成功するのは、ある特定のことに対して強い情熱を持つ人物が、「自分たちなら変えられる」「影響を及ぼすことができる」「もっとうまくできる」と思って事業を生んだ場合です。そして、エネルギーにあふれる創業者が事業を通じて得られる喜びを仲間に伝え、彼らも喜びを感じるようにする必要があります。
戦略を考えるうえでひとつのカギとなるのは、すべての人を常に満足させるのは非常に難しいということです。誰のニーズにどう応えるか。これは、「戦略とは何をするかという問題であると同時に、何をしないかという問題でもある」という、戦略のもうひとつのカギにもつながります。
日本という国の活力源は企業です。多くの企業が依然強く、国際競争でも健闘している。強い技術力を持ち、イノベーションを起こし続けてもいます。そうした中、日本の課題は企業がより力強く成長できる環境を整備し改善していくことだ。
CSR活動を宣伝と考えている限り、様々な取り組みに手を出して結果を出せないままに終わってしまいます。何をすれば本当に変化を生み出すことができるのか、そのことを考えなければなりません。
社会に変化を生み出すことができるのは、企業が事業活動に密接した社会問題の解決に取り組むときだと私は信じています。なぜなら、社会と共有できる価値を創造するのに必要なスキルや技術、人脈は企業活動の中に蓄積されているからです。
企業は地域の団体を支援し続けるべきですし、従業員がボランティアをしたり社会運動に参加したりすることを許容すべきです。このように良き市民であることは企業にとって必要なのです。ですが、それだけでは十分ではありません。事業戦略と社会との間に強い関係を築くことが不可能な分野に企業は最も力を入れるべきです。
事業において最も大切なことは、他社とは違う独特の方法で(顧客や社会の)ニーズを満たすことです。ニーズを満たすことから利益が生まれます。利続が先にあって、その後にニーズがあるのではありません。当たり前のことに聞こえるでしょうが、実際には「どうすれば利益を得られるか」と考えるところから事業を始める人が多すぎる気がします。
今日、最も優れた事業戦略を構築するためには、社会貢献、社会問題解決のような社会的な側面を欠かせなくなっています。どんな企業でも、価値ある提案をするためには、社会的な側面をつけ加える必要があります。今日では顧客も取引先も、事業戦略に社会的な側面を持たせた企業を評価するのです。
企業の社会的な問題への関与には、これまで「圧力政治」「CSR」というふたつの段階がありました。企業は次の3番目の段階に進む必要があります。それは価値を共有する段階です。この段階では、企業の事業戦略と社会とを結合させ、社会問題を企業の事業活動とは切り離して別の課題と見るのではなく、事業戦略と一体のものとして取り扱うのです。
日本企業の歴史的な強みと個性は、組織の全部門が協力して企業全体の質を高めることができる「トータルクオリティー」の概念に体現されていたと思います。一方、日本企業は歴史的に、戦略の分野が弱かった。戦略というものがいまだに十分に理解されていません。
CSR活動の場合、ほとんどの企業は支援活動に費やした金額や参加した人数といった数字でCSRに費やした費用だけを計算しています。こうしたインプットではなく、アウトプット(結果)を測定することを提案します。
ターゲットを広くした同業者よりも、狭いターゲットに絞るほうが、より効果的で、より効率の良い戦いができる。
経営が高度化し洗練されていく中で、単純なことが見落とされています。おそらく、経営者の多くが従来型の経営の慣習にとらわれ、事業の根本的な目的や社会との結びつきといった観点を失いつつあるからでしょう。
企業は自社がどのような会社なのか一貫したイメージを築き上げなければなりません。
数々の素晴らしい企業の歴史を振り返ると、大抵の場合、初めに強い情熱を持つ人物がいるものです。彼らは何が根本的に重要なのかを知り抜いているため、あらゆる障壁を乗り越えることができます。
私たちは皆、複雑な仕事に取り組んでいるため、ときとして単純で明快なことが見えにくくなる。ですから、私はそこに目を向けるようにしています。ディテールにとらわれずに根底に横たわっているメッセージをくみ取り、それを理解する。当たり前のことを見失いがちな時代だからこそ、そうすることの重要性は高いと考えています。
企業の成功は自社のユニークな存在になることからもたらされます。
リーダーシップとは、日々の活動の中で選択をすることだと思います。しかし、素晴らしいリーダーや企業がほかと一線を画しているのは、その選択の積み重ねがユニークで、結果的に本物の価値を生み出しているからです。
社会と企業との間で価値が共有されるようになるのは、社会だけでなく企業も利益を得られます。長い目で見れば、より持続可能な競争上のポジションを企業はつくりあげることができます。
私はいま、戦略についてプレゼンテーションをする際は必ず、戦略をより良いものにするために戦略と社会貢献のリンクをどう活用すべきかについて言及しています。事業戦略の社会的な側面は、製品の模倣や独自の生産プロセスよりも模倣することが難しいことが多いからです。
世界中で多くの企業が社会貢献活動として寄付を行っています。寄付をするのはいいことですが、その影響力は限定的です。経済的に自立した仕組みなどを構築する方が、社会的に大きなインパクトを及ぼすことができます。
マネジメントを学ぶことは素晴らしい会社を構築するうえで役立つことではありますが、高度に洗練された経営理論は往々にして、経営者の日を基本から逸らしてしまうことがあります。
あなたの直感通り、自分がハッピーで、自分が働きかけている相手にエネルギーを与え、ワクワクさせ、ハッピーな気持ちにさせることができなければ、成功する見込みは非常に低いでしょう。
戦略とは、何をやらないかを決めることである。